| 第8回 牧口先生 「大善生活法の実践」㊦ 24年8月27日 |
| 現在が栄えてこそ先人の偉大さは輝く 自他共の幸福を目指す民衆の連帯を 牧口先生は、人間としての生き方について、「小善生活」「中善生活」「大善生活」の三つに分類していた。 「小善生活」は自分のことだけを考える生き方で、「中善生活」はそうした個人主義から脱して、国家のような大きい存在のために自分を無にすることを目指す生き方である。 この「中善生活」は、一見、高尚な生き方のようにも見えるが、軍国主義が広がる中、牧口先生が特に危険性を指摘していたものだった。 その内実は大義の名の下に大勢の人々を犠牲にする考え方であり、「偽善」や「独善」に陥っているだけでなく、社会を蝕む「大悪」に等しいと厳しく批判したのである。 これに対して、「大善生活」は、自分を無にして犠牲になるのでもなく、他の人々に犠牲を強いる道も選ばない。 時代の混迷がどれだけ深まろうとも、その混迷に染められることなく、自らの幸福と人々の幸福のために、自身に備わる生命力を開花させながら、より良い社会を築く挑戦をしていく生き方である。 それはまさに牧口先生が「大善生活法の実践」と題する文章で記していた、「泥中の蓮」という、法華経の「如蓮華在水」の法理を示す言葉が象徴している通りの生き方なのだ。 戦時下の社会で、“自他共の幸福”を求める生き方を広げるために牧口先生がどれほど心血を注いだのか――。 その自身の必死の思いと重なり合うものとして、牧口先生が「大善生活法の実践」で言及していたのが“昼間のカンテラ”の逸話であった。 そこでは哲学者のソクラテスに由来する故事として紹介されているが、現存する最古の史料である『ギリシア哲学者列伝』では、ソクラテスの孫弟子に当たるディオゲネスのエピソードとして伝承されている話だ。 ディオゲネスは白昼にもかかわらず、カンテラ(ランプ)に火を灯し、“私は人間(本当の人間)を探しているのだ”と言って、あちこちを歩き回った。 実のところ、その行為は、ソクラテスの精神を彷彿とさせるものだった。 ただ生きるのではなく、よく生きることが大切であると訴えたソクラテスの精神は、白昼にあえてランプを灯すことで、人々の魂を“かりそめの昼間”の状態から目覚めさせようとするような振る舞いとも、気脈を通じていたからである。 いずれにしても、牧口先生がこの逸話を知った時、“まさに自分も同じ思いで同志を探してきた”と強く共感したのではないだろうか。 牧口先生は、学会の同志が苦難を乗り越えた実証を語る姿に対し、「斯る体験談の発表は、全く命がけの結果であり、ダイヤモンドの様なものであり、砂の中から僅少なる金粒を集めた様なものであります」と、称賛してやまなかったのだ。 1987年11月18日、東京・信濃町の創価文化会館(当時)で行われた創立57周年記念勤行会。 池田先生はスピーチで、学会が大難を受けた時に決然と道を開いたのは牧口先生と戸田先生であったと強調。 「私もまた、一切の矢面に立って、苦闘の連続であった。それが牧口先生、戸田先生に貫かれた“創立の精神”であり、学会精神につらなる道なのである」との真情を語った 信仰を通してつかみ取った体験を語ることで、さまざまな苦悩を抱える人々に希望を灯し、“自他共の幸福”を目指す民衆の連帯を広げていく――。 1930年11月18日の創立以来、初代会長の牧口先生が必死の思いで築いてきた創価学会の尊き実践の伝統は、戦後、戸田先生の下でさらに力強く進められ、その後、池田先生の奮闘によって世界192カ国・地域にまで大きく広がった。 池田先生は、1987年11月18日に行われた創立57周年記念勤行会で、牧口先生の闘争を振り返りながら、こう訴えたことがある。 「今日、このような未曾有の大発展のなか、晴れやかに創立の記念日を祝せるのも、その根幹はすべて、嵐の中を、牧口先生が厳として立ち上がられたからである。 戸田先生が、炎のごとく“獅子の心”を燃やして、立ち上がられたからである。そして『師弟』の精神で、第三代の私も立ち上がった」 「牧口先生はかつて、こう言われた。『現在、栄えていればこそ、先人が偉大になるのであり、今が栄えなければ、先人の偉大さも光彩がなくなるのである』と。まさに至言である。 私も牧口先生、戸田先生の偉大さを証明するために、その構想をなんとしても実現しようとの一念で走り、戦ってきた。第三代の私が学会を栄えさせなければ、先人への報恩はできない。 師の偉大さを宣揚できない。ゆえに、この約三十年間、休みなく働いた。すべての道を拓きに拓いてきたつもりである」 池田先生は、この時、牧口先生が学会を創立した時の年齢と同じ59歳だった。 それ以降も、36年間にわたって全世界の同志を励まし続けながら、大聖人の仏法の「如蓮華在水」の精神を体した民衆運動の大輪を地球上に花開かせてきたのである。 創立100周年の2030年を目指して前進する今、三代の会長がどれだけの思いで学会の万代の土台を築いてきたのかを改めて学びながら、一人一人の勝利の姿をもって社会に実証を示す挑戦をしていきたい。 <語句解説> 如蓮華在水 法華経従地涌出品の「不染世間法 如蓮華在水(世間の法に染まらざること 蓮華の水に在るが如し)」の一節にある、地涌の菩薩をたたえた言葉。 『ギリシア哲学者列伝』 ソクラテス、プラトン、アリストテレスなど、多くの哲学者の学説やエピソードを集成した書物。3世紀ごろに記されたとみられ、この種の文献で現存最古の貴重な史料。 ディオゲネス 紀元前4世紀後半に活躍した哲学者。ソクラテスに師事して、キュニコス派を立ち上げたアンティステネスの弟子。社会的な慣習に束縛されない自由を志した同派を代表する人物で、後のコスモポリタニズム(世界市民主義)にも影響を与えた。 |