| 第2回 牧口先生 「人生地理学」〈緒論〉㊦ 24年7月2日 |
| 世界は人類の「共同生活」の舞台 「我此土安穏」の心で誓いの前進を! 牧口先生が『人生地理学』の中で、自分の子どもの命と健康を支えてくれた乳製品や綿着を見る時、スイスの牧童や、炎天下で汗を流して働くインドの人々の存在が目に浮かぶと述べているように、その眼差しは何より、“世界の見知らぬ人々の労苦”に向けられていた。 そうした人々に対する感謝の思いを、世界認識の基軸に据えていたのである。 であればこそ牧口先生は、目に見えない結びつきを通して日常生活に恩恵をもたらしてくれた人々をはじめ、同じ地球の上で暮らしている誰もが、共に平和で安心して生きられる時代を築かねばならないと考えた。 そして、その一心で、『人生地理学』において、自他共の幸福を目指す「人道的競争」のビジョンを提唱したのではないかと思えてならない。 翻って現代、当時とは比べものにならないほどグローバル化が進む中、こうした生命感覚に根差した世界認識に立って生きることが、ますます強く求められているのではないだろうか。 池田先生は2020年の平和提言で、牧口先生の『人生地理学』の一節に触れながら、次のように述べていた。 「牧口会長の思想の基盤には、世界は『共同生活』の舞台にほかならないとの認識がありました」 「出会ったこともない世界の人々への尽きせぬ感謝の思いが示すように、牧口会長は『共同生活』という言葉を世界のあるべき姿としてではなく、見落とされがちな世界の現実(実相)として位置付けていました。 世界は本来、多くの人々の営みが重なり合い、影響を与え合う中で成り立っているにもかかわらず、その実相が見失われる形で競争が続けられることになれば、深刻な脅威や社会で生じた歪みの中で苦しんでいる人々の存在が目に映らなくなってしまう。 だからこそ、『共同生活』を意識的に行うことが重要となるのであり、『自己と共に他の生活をも保護し、増進せしめんとする』生き方を社会の基調にする必要があるというのが、牧口会長の主張の眼目だったのです」と。 この提言から2カ月後(同年3月)、新型コロナウイルス感染症の流行が世界的に拡大し、パンデミックが起こった。 パンデミックの発生に伴い、それまでの日常生活が突然寸断された時、“自分たちの生活は、いかに多くの見知らぬ人々の存在や、世界とのつながりによって支えられていたのか”との感慨を抱いた人は、決して少なくなかったはずだ。 2030年までの国際目標であるSDGs(持続可能な開発目標)でも、世界市民の意識を涵養する重要性が掲げられている。 そのための取り組みといっても、さまざまな国の文化と歴史に関する知識や、世界が直面する問題への理解を深めるだけで十分とはいえないだろう。 パンデミックという試練を通じて実感した思いを忘れることなく、牧口先生が強調していたような“世界は「共同生活」の舞台にほかならない”との生命感覚を磨くことが大切になるのではないだろうか。 ――SDGsの実現のために」。SGIと地球憲章インタナショナルの共同制作による展示は、新型コロナウイルス感染症の世界的大流行で“社会のあり方”が問い直されたのを受けて、2021年からスタートし、世界各地で開催されてきた SGI(創価学会インタナショナル)としても、池田先生が平和提言や大学講演で「世界市民教育」の重要性を繰り返し訴える中で、意識啓発の活動に積極的に取り組んできた。 その源泉には、牧口先生の精神はもとより、仏法が説く「万人の尊厳」の思想がある。 「われは万人の友である。 万人のなかまである」との信念のままに、東西南北の地理的な隔たりや部族の違いを超えて、さまざまな人と対話を広げ、苦悩を抱える人々の所に足を運んだ釈尊とその弟子たちは、「四方の人」と呼ばれていた。 初期仏典には、釈尊たちがこうした行動に加えて、毎日の生活の中で“自分と世界とのつながり”をどのようにして感じ取っていたのかを、うかがわせるような逸話が記されている。 ――釈尊たちは、一日二回、世間を見渡すことを忘れなかった。 朝早く世間を見渡す時には、世界の一番外側の端から自分たちがいる場所に向かって思いを巡らせて、夕方に世間を見渡す時には、自分たちがいる場所から外側へ向かって思いを巡らせていた――と。 私たち学会員が朝夕の勤行で読誦する法華経の如来寿量品にも、「我此土安穏(我が此の土は安穏にして)」や「我浄土不毀(我が浄土は毀れざれども)」との言葉がある。 自分たちの幸福だけでなく、同じ地球に生きるすべての人々の幸福と安穏を祈るとともに、人類の「共同生活」の舞台である世界を破壊させてはならないと強く念じながら、日々の行動を重ねていく誓いの前進をしていきたい。 <語句解説> パンデミック 感染症が世界的規模で流行すること。 世界保健機関は2020年3月11日、新型コロナウイルス感染症の流行が、最も強く懸念されるパンデミックの段階に至ったことを表明した。 SDGs 2015年9月の国連サミットで採択された国際目標。貧困、飢餓、気候変動など、17の目標が掲げられ、2030年までの達成が目指されている。 |